日々の雑学 ●●●
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夫・作家吉村昭の闘病と死を書いた、津村節子 著「紅梅」を読む
2013年07月18日(木) 22:52

紅梅 (文春文庫)紅梅 (文春文庫)
(2013/07/10)
津村 節子

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吉村昭の小説は文庫で普通の手段で手に入るものはほとんど全て読んできた私だが、吉村昭夫人である津村節子氏の小説は全く読んでおらず、これが初めてだ。

夫の死を扱った私小説なので、吉村昭の死の様子をうかがい知るには、必読だったのだが文庫になったら読もうと思っていて、今に至った。

吉村昭には、実弟の癌闘病とその死を扱った「冷たい夏、熱い夏」という私小説もあって、ここには実に詳細に弟の闘病とそれを見守る自分と周辺の人々が描かれている。


冷い夏、熱い夏 (新潮文庫)冷い夏、熱い夏 (新潮文庫)
(1990/06/27)
吉村 昭

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このほかにも、吉村の私小説には、自身の肺結核の闘病と手術のことや、実母の子宮癌死のことなど、身近な人の闘病とその死を、精緻な吉村筆致で描いてきている。

吉村昭の愛読者としての勝手な要望を言えば、吉村昭の死も、吉村昭自身に描いて欲しかったのだが、こればかりはどう¥しようもない。

吉村昭はエッセイもたくさん書いていて、その中にはたびたび津村節子氏も登場するけれども、この「紅梅」を読むと、吉村もエッセイと言えども、照れくさいことは避けて書いているのだな、ということがわかったりする。

私小説でさえも、エッセイでさえも、それは著作であり、生の日記を読むのとは違う。
他人に読ませる前提で書いたら、触れたくないところは触れないのは当たり前の話だ。

吉村家の家庭のことは、吉村のエッセイや私小説で全部わかっているようなつもりになっていたのだが、今回、津村節子の「紅梅」を読むと、吉村の書いていない面もたくさんあることがわかる。

一家に作家が二人もいる、というのは異常なことだ、と吉村も津村もたびたび書いているし、無名時代の結婚に、文学界の諸先輩はやめた方が良いという助言が多かったことは、吉村の著作にもたびたび言及されている。

二人が作家で食えるようになって以降、吉村は夫人が台所仕事をすることを禁じ、お手伝いさんに任せて、著作に専念するように言っていたことなど、吉村のエッセイでは触れられていないエピソードだ。

一人の癌患者の闘病と、その死という意味では、吉村昭の闘病は、世の多くの癌患者に比べて、特別な何かが起きるわけではない。
看取る家族の側も、いさかいがあるわけでもないし、治療方法を巡って争いがあるわけでもなく、淡々と進行していく。

これを小説にする意味があるのか、という原点に立ち返ると、私のような吉村昭愛好者、吉村の配偶者である津村節子にとっては、もちろん意味があることなのだが、そうでない一般の人にとって、意味があるのか、という問いには明確な意見を持てないでいる。

津村節子の他の作品を読んでいないので、津村文学の中でのこの作品の位置づけを相対化できない、というのも私の限界ではある。

両親兄弟のほとんどを癌で亡くし、それらを題材に小説も書き、またそれ以外の医療小説も多く書いていた吉村昭には、末期癌患者の闘病ということに関しての特別な思いはあったであろうことは、吉村の死の前から思っていたことだ。
終戦前後、肺結核で、ほぼ助からないと言われていた彼でもあるし、昭和2年生まれという世代は、ぎりぎりで徴兵に間に合わなかった世代で、一度は戦地で死ぬ覚悟を決めていた世代でもある。

死ぬはずだったのに、生かされているという思いは、同じ昭和2年生まれの藤沢周平、城山三郎にも共通して流れている思いであって、死に対する未練執着が、完全な戦後世代とは違うのは感じるのである。

相当知っているつもりだったけれど、実は知らなかった吉村昭の一面を他の作家の視点で見させてもらったという意味では、貴重な著作だった。


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